【君がいた夏】クモと過ごした日々
この頃、ふと思いを馳せることがあります。一緒に住んでいた小さなクモへの思いを...。
あれはたしか、2年前の夏でした。出会いは突然に訪れたのです。
フローリングの上を、なにか小さな黒い点が移動していました。虫のようでした。
青虫は死ぬほど嫌いな私ですが、他の虫はさほど怖くないので、近寄って確認してみました。
「クモだ...。」
小さなクモでした。あまり詳しくはありませんが、糸を出すタイプのクモでは無いことはすぐわかりました。
外見の特徴から調べると、小さな害虫をとって食べてくれる良いクモのようです。
とりあえずそっとしておこう。良いヤツみたいだし...。
最初はそれくらいだったのですが、ときたま姿をあらわしては、トコトコ歩く様子に次第に愛着が湧いてきました。
彼(なのか彼女なのかわかりませんが)には『ジグモさん』と名前を付けて、同居クモとして一緒に暮らしていました。
気付けば本当にコバエも湧かず、快適ライフを堪能していたわけです。
なので、当時一緒に住んでいた妹にもジグモさんの存在を伝え、たまに姿を見せる彼を愛でていました。
踏まないように細心の注意を払っての生活です。なかなかスリルがあって楽しいものでした。ジグモさんからしてみたら、スリルなんてもんではないのでしょうが...。
そんなこんなで仲良く暮らしていたのですが、ある時期からパタリと姿を見せなくなったのです。
「出て行ったのかな?」とも思ったのですが、少し心配になり、ジグモさんの平均寿命を調べることに。
「2年から3年.....」
出会いからは1年と半年程だったと思いますが、寿命がきたと言ってもおかしくはないくらいの月日を過ごしました。
ペットとして飼っていたわけではありませんが、どこか喪失感を感じて寂しいものでした。
あれからというもの、シャレにならないくらいコバエが湧く湧く。私の部屋の一角が、コバエの集団墓地と化す程に大量発生したのです。
「ジグモさん、あなたのおかげだったのね…。」と、青く遠い空に、いまは亡きジグモさんへの思いを馳せることしかできない私。
大切なものは、失ってから気が付くものです。ジグモさんがそれを教えてくれました...。
それと、クモを見つけても殺さないであげてください。本当にコバエ出てきませんから!
2代目ジグモさんが家に来てくれることを願っている、こげぱんでした。